好酸球(こうさんきゅう、Eosinophil)はヒトの免疫系を司る細胞、白血球の一種です。代表的な免疫細胞である好中球と同様に貪食能や殺菌能を有しており、とくに寄生虫感染に対してヒトの体を守る免疫機能を有していますが、寄生虫に感染する機会の減った現代では、各種のアレルギー疾患や気管支喘息に関わりの大きい細胞として知られています。
好酸球はmajor basic protein(MBP)やeosinophil cationic protein(ECP)といった顆粒を有しており、サイトカインなどの刺激により細胞外へ放出されます。これらはヒトの体を守る側面と臓器を傷害する側面の双方を持ち合わせています。好酸球の数が過剰に増えたり、その機能(働き)が過剰になったり、ヒトの臓器に好酸球性炎症が生じ、各臓器特有の症状が出現することがあります。
正常の場合、好酸球は末梢血中に流れている白血球のうち0~7%程度を占めています(実測値では100~500個程度/1マイクロリットル(μl))。末梢血中の好酸球数の増加は、500~1500/μlを軽度増加、1500~5000/μlを中等度増加、5000/μl以上を高度増加と分類しています。
末梢血中の好酸球はあくまで「見かけ上」の数値のため、実際に内臓や組織にどの程度の好酸球が集まり、悪さをしているかは推し量れません。末梢血中の好酸球数が1500/μl以上の場合に、好酸球増多症と判断していますが、何ら症状のない場合も少なくありません。
好酸球数が増加する病態や疾患としては、以下のものがあります。
これらの疾患の鑑別を考えながら検査を進め治療方針を立てます。
血液中の好酸球は健康な方でも一時的に増加することがありますので、一定期間の経過後に再検査することを勧めています。続けて増加するようだったり、好酸球増多症に関連する症状や徴候があったりすれば、追加の検査を行います。
薬剤が原因と考えた場合には、疑っている薬剤を中断することで減少に転じることもあります。
治療は好酸球増多症を引き起こしている原疾患の治療が必要です。
安易に副腎皮質ステロイドホルモンや抗ヒスタミン薬などを使用せず、アレルギー専門医や血液内科専門医に相談することをお勧めします。