現代社会は高齢化の一途を記しており2018年において高齢者は総人口と比較して28.1%と世界と比較しても超高齢化社会となってきている。その中で誤嚥性肺炎は1979年の死亡者は男子264人,女子159人であったが、概ね単調に増加し2016年には高齢者として男子21,730人,女子16,920人まで上昇しており今後も増加することが予想される。
誤嚥性肺炎は嚥下機能障害のため唾液や食べ物、あるいは胃液などと一緒に細菌を気道に誤って吸引することにより発症する。嚥下機能障害は脳血管障害などの神経疾患、ADL低下している施設入居者、口腔環境の異常や食道運動異常など様々な原因があり、これらが複合的に関与して誤嚥性肺炎が引き起こるものと考えられている。以前は嫌気性菌が主体と考えられていたが、最近の研究では市中肺炎においては肺炎球菌、黄色ブドウ球菌、インフルエンザ菌、腸内細菌科の報告もある。
通常の肺炎と同様、採血、抗原検査、喀痰培養、血液培養、胸部レントゲン、胸部CTなどを来院時に施行する。画像所見や嚥下機能・現病歴から誤嚥性肺炎を診断し、適切な抗菌薬投与を行なっている。また、状態が不良であれば禁食期間を一定期間設ける必要があるが、禁食期間に比例し嚥下機能が低下する事が報告されていることから、他職種との連携を取り、患者の安全性を保ちながら機能維持に努める。
誤嚥性肺炎の診療において他職種との連携が必須である。歯科医師を主体とした口腔ケアチーム介入により口腔内衛生環境や嚥下機能低下の原因検索・治療を行う。看護師による日々の口腔ケアや、理学療法士によりリハビリテーション、嚥下機能評価(時に耳鼻咽喉科による専門的な精査を行う)を行う。残念ながら嚥下機能が低下した場合は、Medical Social Workerにより退院後の支援とチーム医療にて患者サポートを行っている。
誤嚥性肺炎はご高齢の患者さんの場合は老衰の経過の1つであり、基礎疾患がある方の場合は元々の疾患が改善しなければ、肺炎を繰り返すリスクがあります。誤嚥性肺炎を劇的に予防する方策は未だ見つかってはおりませんが、患者さんに還元できる科学的根拠は日進月歩の勢いで見付かりつつあります。患者さんと医療者側とで2人3脚となって誤嚥性肺炎を克服・あるいは上手に付き合えることができるよう努めます。