ACOとは近年特に注目されている概念であり、喘息とCOPDという異なる2疾患の特徴を合併している状態を意味する。実臨床において、既に喘息あるいはCOPDの診断がついている患者が多く、喘息と診断が付いていた患者にCOPDの特徴が合併した場合ACOと診断され、COPDと診断が付いていた患者に喘息の病態が合併していた場合もACOと診断されるようになった。
喘息と診断されていたけれども、労作時の呼吸困難感や、喀痰分泌が気になる患者の場合、喫煙歴や胸部高分解能CT(HRCT)、DLco(肺拡散能検査)を含めた呼吸機能検査を行うことにより、ACOかどうかを評価可能である。ACOである場合、気管支拡張薬の一種である長時間作用性抗コリン薬(LAMA)を主体とした治療を追加することにより症状の改善が期待可能であり、肺癌などの併存症に対するフォローアップの必要性が生じる可能性もあるため、より慎重な診療が求められ、臨床的に重要な評価と言える。
COPDと既に診断されていた場合、COPDなのかACOなのかの違いは、臨床的に大きな意味を持っている。2018年、本邦において初のACOのガイドライン(診療指針)が上梓された。同ガイドラインによれば、ACOの評価には呼気一酸化窒素測定(FeNO)や気道可逆性試験など、比較的専門性の高い喘息の臨床検査が必要と記されている。上記の検査が実施困難な医療機関に通院していた場合、ACOと正しく診断されていない可能性がある。純粋なCOPDであったと考えていた患者さんにおいて、もしもコントロールのつかない喘息を合併していた場合、予後や呼吸機能が悪化する可能性が指摘されているため、吸入ステロイド薬による追加治療が必須となる。吸入ステロイドの併用によって現在の症状の改善や、将来生じる可能性がある増悪(ぞうあく)を減らす効果が見込める。こうした新たな知見は、重症のCOPD患者さんの中に隠れているACO患者を見出すことにつながり、従来の標準的治療では管理が不十分だった患者のQOLを高めることに寄与できる、と考えられる。
当院では外来通院中のCOPD患者ならびに喘息患者のうち、その大多数の患者さんでACOの検索を行なっております。特にCOPD(だけ)である場合とACOである場合は薬物治療の内容が大きく異なりますので、一度はACOかどうかの検査・評価を受けることをお勧めします。