COPDは日本語名で慢性閉塞性肺疾患、一般的には肺気腫とも呼ばれる疾患である。本邦において約530万人の患者数が推定されているが、実際の診療率は10%に満たないと言われている。その背景として、COPDの認知率の低さや正確な診断がなされていないことが考えられている。初期症状は無症状であるか、咳嗽・喀痰を認めるのみで、加齢変化と勘違いして罹患を自覚していない患者が多数存在するため、症状が重い患者さんは勿論のこと、喫煙歴がある方は積極的に呼吸機能検査を行い、COPDの早期診断に務める必要がある。当院では科学的根拠に基づいたCOPD診療を患者さんに提供するためにCOPD診療の経験豊かな医師やメディカルスタッフが以下の医療を提供している。
COPDは適切な呼吸機能検査なしでは過剰/過少診断に至ることが報告されているため、当院では適切な方法で呼吸機能検査を行いCOPDの診断を行なっている。COPDと診断するためにはCOPDを主体とした呼吸器疾患以外に、循環器内科を主体とした他診療科との連携が必要になる。当科の経験豊富なスタッフだけでなく、必要に応じて他の専門診療科と連携を行い、正確な診断に至るよう邁進している。
COPDの治療は大きく分けて薬物療法と非薬物療法がある。薬物療法として、長時間作用型抗コリン薬や長時間作用型β受容体刺激薬の投与を軸にした治療を行う。また、喘息病態合併の場合や呼吸状態が一過性に悪化する急性増悪を繰り返す場合は吸入ステロイド薬(inhaled corticosteroid ; ICS)の併用を考慮する必要がある。一方、非薬物療法としては禁煙指導、各種ワクチン接種、呼吸リハビリテーション、酸素療法、換気補助療法などがある。これらの治療を適切に提供しながら、現状の改善(症状及びQOLの改善、運動耐容能と身体活動性の向上及び維持)ならびにリスクの低減(増悪の予防、全身併存症及び肺合併症の予防・診断・治療)を目標とした診療を行う。
CATスコア、mMRCスコア、6分間歩行検査など、患者さんの評価に重要な検査を経時的に行うことにより、患者さんの身体的な変化を客観的に評価することが可能である。肺癌の併発は患者さんの予後に大きな影響を与え得るため、患者さんと協議を行い詳細な画像検査を行うこともある。
H3-5 COPD急性増悪を含めた状態悪化に対する対応
COPD患者さんは、急性増悪、気胸の合併、肺癌の合併、心不全の合併など多くの合併症を併発しやすいと言われている。当院当科では救命救急センター・呼吸器外科・放射線科・腫瘍内科・循環器内科といった診療科と連携した包括的な加療が可能である。
COPDは適切な管理を行うことにより平均寿命だけでなく健康寿命を改善させることが可能な疾患です。COPDはcommon disease(一般的な疾患)ですが、大学病院だからこそできることも数多くあります。合併症検索・身体活動性や適切なワクチン接種を含めた患者教育・禁煙指導・吸入アドヒアランス向上・適切なデバイスの使用など、専門的な評価・治療を提供する事が可能です。