呼吸器疾患と歯科病変との関連においては、特に誤嚥性肺炎の予防に口腔ケアの重要性が指摘されている。口腔内には700種類以上の微生物が存在し、口腔内ケアが不十分であると、微生物の数も増加し、全身へ種々の影響をもたらす。
口腔内の感染症で頻度の高い疾患として、齲歯と歯周病があげられるが、進行により全身炎症を惹起し、糖尿病や動脈硬化、感染性心内膜炎、虚血性心疾患等の誘因となるだけでなく、高頻度に敗血症のfocusとなりうることも報告されている。
高齢に加え多種薬剤の内服、化学療法や放射線療法などを背景とした唾液分泌量の減少、麻痺などによる運動障害が、口腔内細菌叢の悪化に寄与することが知られている。このような状態はオーラルフレイルと呼ばれ、種々の全身性疾患の悪化に関与していることが示唆されている。
2011 年の人口動態統計では、肺炎が脳血管疾患を上回り、日本人の死亡原因の第 3 位となった.肺炎が原因となる死亡者のうち 65 歳以上の高齢者が 96.5%と極めて高い割合を占めていることからも,超高齢化社会における肺炎の死亡率はさらに増加すると予想される。
本学では、昭和大学歯科病院に隣接している内科クリニックに呼吸器・アレルギー内科より専任スタッフが出向しており、呼吸器・アレルギー疾患と中心とした専門医療、生活習慣病などの内科慢性疾患の管理などに取り組むとともに、歯科各科からの内科的な全身疾患に関する種々のコンサルトに対応している。また、歯学部職員を対象に誤嚥性肺炎について講演を行うなど、啓蒙をおこなっている。
さらには、昭和大学病院付属東病院には睡眠医療センターが併設されており、当科より専任スタッフが出向している。そちらでは睡眠時無呼吸症候群を中心とした睡眠医学の専門診療を推進しており、治療の一環としてマウスピース(スプリント)の製作のため、歯科各科と密な連携を行っている。
医学部と歯学部を有する昭和大学のストロングポイントを生かし、呼吸器疾患と歯科病変、双方が改善されるトータルケアを目指す診療を心掛けて行っている。
横江 琢也ほか. 私の推奨する呼吸器診断法 睡眠時無呼吸症候群(解説). 2013; 32: 663-667.
Koichi ANDO, Hironori SAGARA, Shin INOUE, et al. Association between Casual Serum Triglycerideevels and Bone Resorption Activity in Japanese Middle-aged and Elderly Women The Showa University Journal of Medical Sciences 2016;28(4):349-357