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昭和大学医学部内科学講座呼吸器・アレルギー内科学部門 > 診療について > 呼吸器疾患について > その他 > 呼吸器理学療法と和温療法

呼吸器理学療法と和温療法
Pulmonary rehabilitation and Waon therapy

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呼吸リハビリテーションとは
Pulmonary rehabilitation / Respiratory rehabilitation

呼吸リハビリテーションとは、慢性呼吸器疾患患者さんの身体的および心理的状態を改善し、健康増進行動への長期的アドヒアランスを推進するための包括的な介入と位置付けられています。1)医師だけではなく、理学療法士、看護師、栄養士、作業療法士、ソーシャルワーカーなど様々な職種が協力して呼吸リハビリテーションにあたっています。2)呼吸リハビリテーションは1960年代に主に慢性閉塞性肺疾患(COPD)への取り組みをきっかけとして発展していきました。当時COPDは安静が基本の疾患でしたが、運動による効果が認められたことをきっかけに徐々に呼吸リハビリテーションの重要性が明らかになっていきました。2000年代には複数の海外の呼吸器学会から呼吸リハビリテーションの公式ガイドラインが発表され、現在ではトレーニングの細かな分別に応じた具体的なガイドラインが発表されるに至っています。3)また、現在ではCOPDの他、間質性肺疾患、胸腹部外科術後、誤嚥性肺炎においても呼吸リハビリテーションによる効果があったと報告がされています。4)

COPDと呼吸リハビリテーション
Pulmonary rehabilitation for COPD

COPDは生活の質、症状、併存疾患、生命予後に大きな影響を与える慢性的な疾患であり、国際的なCOPDの診断と管理のガイドラインであるGOLDから、現在管理における指針が発表されています。包括的・多面的な管理が推奨されており、呼吸リハビリテーションはそのうちの治療法の一つとして定義づけられています。5)COPDにおける呼吸リハビリテーションには、患者さんの入院回数の減少、救急外来受診回数の減少、運動能力の向上、呼吸困難の減少、筋力・持久力の改善、生活の質の改善、日常活動制限の改善などの効果が示されています。2)　対象となる病態は、不安定な虚血性心疾患やコントロールされていない危険な不整脈などのない、症状のある安定期のCOPDです。ご高齢の方や、重症な方であっても安定期であれば対象となります。筋力・持久力トレーニングとコンディショニング、ADLトレーニングを中心的な要素とし、病期や疾患に対しての理解と需要を進めるための教育プログラムも含まれています。6)

COPDと和温療法
Waon therapy (Sauna therapy) for COPD

和温療法は2007年に鹿児島大学の鄭教授が自身の論文で提唱した低温温熱療法です。60 ℃ の乾式遠赤外線サウナ浴で全身を15分間均等加温室（器）で保温し、深部体温を約1.0 ℃ ～1.2 ℃上昇させた後、さらに30分間の安静保温で和温効果を持続させ、終了時に発汗に見合う水分を補給する治療法と定義されています。7)1994年に慢性心不全患者に対する遠赤外線を用いたドライサウナによる心負荷の軽減が報告されて以降8)、様々な疾患に対し効果が示されています。COPDに対しても、肺高血圧を伴うCOPDに対して和温療法が運動中の肺動脈圧、運動中のSpO2最低値、呼吸症状を改善することを示されました。9)また、別の研究グループでは和温療法がCOPD患者さんにおける末梢気道閉塞を改善させる可能性について示唆されています。10)

現在当院では、和温療法のCOPDに対する効果について、さらなる研究が進められています。今後、肺気腫モデルマウスにおける和温療法（遠赤外線ヒーターによる温熱療法）の影響や、慢性閉塞性肺疾患患者に対する和温療法の効果についての単施設前向き群間比較試験などを施行する予定です。

【引用文献】

  1. Spruit MA. Pulmonary rehabilitation. Eur Respir Rev. 2014 Mar 1;23(131):55-63.
  2. Spruit MA. An official American Thoracic Society/European Respiratory Society statement: key concepts and advances in pulmonary rehabilitation. Am J Respir Crit Care Med. 2013: 188(8); e13-64.
  3. 福地義之助. 呼吸リハビリテーション50年の歩み – 日本と欧米の対比から -. 理学療法学. 2015: 42(8); 840-841.
  4. 青柳陽一郎. 呼吸器疾患に対するリハビリテーションとエビデンス. JOURNAL OF CLINICAL REHABILITATION. 2017: 26(4); 390-395.
  5. Agrawal R. Update on management of stable chronic obstructive pulmonary disease. J Thorac Dis. 2019: 11(Suppl 14); S1800-S1809.
  6. 黒澤一. COPDのリハビリテーション. 治療. 2017: 99(5); 616-622.
  7. 鄭忠和. 「和温療法:21世紀の革新的医療へ」. 日本温泉気候物理医学会雑誌. 2007: 71; 1-2.
  8. Tei C. Acute hemodynamic improvement by thermal vasodilation in congestive heart failure. Circulation. 1995: 91(10); 2582-90.
  9. Umehara M, et al. Repeated waon therapy improves pulmonary hypertension during exercise in patients with severe chronic obstructive pulmonary disease. J Cardiol. 2008: 51(2); 106-13.
  10. Kikuchi H, et al. Effect of repeated Waon therapy on exercise tolerance and pulmonary function in patients with chronic obstructive pulmonary disease: a pilot controlled clinical trial. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2014: 9; 9-15.

著者

伊田　瞳 / 校正：井上　英樹