国内人口の約10%に軽症から重症の気管支喘息(以下、喘息)患者が存在する。また、その約5%が重症喘息とされている。つまり、2019年9月1日の国内人口は約1億2615万人であり、喘息患者は約1261万人存在し、その中で約63万人が重症喘息と考えられている。
喘息を治療する理由や治療するうえでの目標として、
が挙げられる。当然、これらの目標を達成するうえで、薬剤による副作用は回避されなければならない、と我々は考えている。ここ20年ほどの間に良質な治療薬が次々に上市され、大多数の患者さんはそれらによる治療によって目標は達成されている。しかし、従来の治療薬だけは十分な治療効果が得られない患者さんも存在している。その理由としては、分子生物学が明らかにしてきた喘息の重症化・難治化に関与する様々な慢性炎症のメカニズムや、生まれつきもしくは後天的に生じた肺の発達の障害、患者個々が抱える日常生活上の問題(服薬状況の不良化、ストレス、過労など)、他臓器の合併症など、が挙げられる。ときに精神的な要素や、経済的な理由などが原因で喘息の治療が上手くいかない場合がある。
医師は重症度によって治療薬の強さを調整可能である。とくにアレルギー専門医、呼吸器専門医は喘息の治療薬をこまめに調節する技能に長けている。重症喘息患者には高用量(多めの用量)の吸入ステロイドを中心に、複数の気管支拡張剤、抗アレルギー剤を組み合わせて処方している。それでも治療目標が達成されない患者が難治性喘息患者として定義されている。こうした難治性喘息患者は喘息や呼吸器の専門医が在籍する医療機関を受診することで、難治化の要因を見つけ出し、それに特化した治療を追加して行うことが望まれる。特殊な治療は、対象とする患者を選択するために様々な検査を組み合わせる必要がある。かつ万が一に発作(増悪)を生じた際の入院加療は限られた施設でしか出来ないため、その条件にあった医療機関で難治性喘息の治療を継続して行うことが望ましい。当院では、専門医から患者個別の治療選択肢を提案することが可能であり、そのために必要なあらゆる検査と治療・処置を行う設備が整っている。
具体的には、生物学的製剤(バイオ製剤とも)と呼ばれる、医学の発展によって開発された注射薬が発売されている。2019年10月時点で種類は4種類存在し、各々の喘息患者さんには重症・難治性である原因が存在し、その原因ごとに適合する薬剤の選択を専門医が行っている。しかし、それらに適合しない喘息患者も存在し、その場合には、気管支熱形成術(気管支サーモプラスティ)やマクロライド系抗菌薬 (本邦未承認)、アレルゲン免疫療法などを患者さんの病態に合わせて提案している。
昭和大学病院では多数の喘息・アレルギーの専門医が在籍しており、軽症から重症喘息、さらには難治性喘息の治療経験も豊富です。お困りのことがございましたら、かかりつけの先生を通してご受診いただけます。
日本アレルギー学会 アレルギーの病気についてQ&A 気管支喘息(成人)
https://www.jsa-pr.jp/html/faq.html#faq2
本間 哲也ほか.医学と医療の最前線-気管支喘息を中心としたアレルギー性疾患における分子標的治療:現状と将来. 日本内科学会雑誌. 2018; 107:771-778.
田中 明彦. Precision medicineを実践するために(分子標的薬をどのように使いこなすか) 気管支喘息に対する分子標的薬の現状と展望(会議録). アレルギー. 2019; 68: 299.
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