肺高血圧症ガイドライン(2017年改訂版)では、肺高血圧症のなかには肺動脈性肺高血圧症や左心疾患に伴う肺高血圧症、呼吸器疾患/低酸素血症に伴う肺高血圧症などが挙げられている。肺動脈性肺高血圧症は指定難病であり、約2200名がその助成を受給している。
主たる症状として、労作時息切れや易疲労感、失神などがある。動悸や咳嗽,喀血などを認めることもある。確定診断には右心カテーテルが必要であり、血液検査や心エコーだけでは診断に至らない。難治性疾患ではあるが、最近では新規治療薬も発売され、管理できる疾患に近づいてきている。
本稿では呼吸器と関連する呼吸器疾患/低酸素血症に伴う肺高血圧症、ガイドラインではいわゆる3群肺高血圧症について概説する。3群肺高血圧症の原因呼吸器疾患としてCOPDや間質性肺炎、睡眠呼吸障害などが挙げられる。原疾患に対して適切な治療が行われているにも関わらず、呼吸困難などの症状が残存する場合や心不全合併を認める症例においては肺高血圧症の合併を強く疑って検査を進める。しかし、肺動脈性肺高血圧症に対する新規薬剤が次々に発売されている中でも、3群肺高血圧症に対する有効性を示すエビデンスを有した治療薬には乏しく、非侵襲的陽圧換気療法など非薬物療法が主体となっている。予後不良症例も認めており、より早期の診断と介入が望まれる。
昭和大学病院 呼吸器・アレルギー内科は循環器内科や膠原病内科と連携し、定期的に研究会を開き、診断や治療、研究の推進を行っている。循環器内科では右心カテーテルや心エコーも実施可能であり、3群肺高血圧症のみならず、呼吸器疾患を有する症例でも積極的に肺動脈性肺高血圧症の合併を検出する体制が整っていることが強みといえる。
肺高血圧症は肺と心臓にまたがる疾患であることから、呼吸器内科と循環器内科の連携がとれた病院を選択する必要があります。昭和大学病院では、その連携を意識した組織づくりをしております。その一例として、研究会を定期的に開くことにより患者さんに最新の治療や情報の提供を心がけております。
肺高血圧症治療ガイドライン
http://www.j-circ.or.jp/guideline/
相良 博典. COPD併存症としての肺高血圧. 臨床呼吸生理. 2016; 48: 19.
土屋 裕. ボセンタンが奏効した肺線維症合併慢性血栓塞栓性肺高血圧症の1症例. 臨床呼吸生理. 2008;40 : 11-14.