気胸は何らかの原因で肺が虚脱し胸膜腔内にガスが存在する状態を示し、突然発症することが多い。症状は胸痛や呼吸困難、頻脈、咳嗽などがみられる。分類としては、原発性自然気胸、続発性気胸、外傷性気胸、緊張性気胸がある。
原発性自然気胸は、ブラの破裂により生じ、多くは喫煙者に起こる。続発性気胸の原因の多くはCOPDであるが、それ以外に特発性肺線維症や関節リウマチ、胸部子宮内膜症などあらゆる肺疾患で生じる。外傷性気胸は貫通性、非貫通性の胸部外傷によって生じる。医原性気胸も外傷性気胸の1つで、胸腔穿刺や中心静脈カテーテル挿入で生じる。緊張性気胸は、機械換気や心肺蘇生時に生じることが多く、胸腔内陽圧により換気障害や縦隔部の圧排による静脈灌流の減少、心拍出量の減少などが起こり、時に致死的となる。
診断は、胸部聴診や胸部X線、胸部CTなどで行う。胸部X線所見で、肺尖部から虚脱した胸膜までの距離が1㎝以下であれば軽症、2㎝以上であれば中等症と判断する。
軽症の場合は、経過観察し自然治癒を期待するが、中等度以上や呼吸困難がある場合は胸腔穿刺やドレナージチューブによる脱気を行い、肺を再膨張させる。近年、ドレナージをできるだけ回避するプラクティスが有効であるという報告が複数されており、今度の潮流になる可能性がある。1、2 ドレナージチューブを胸腔に留置した場合、肺が膨張し24時間エアリークがなければ、ドレナージチューブの抜去が可能となる。5日以上ドレナージを施行しても、リークが持続する場合は外科手術を考慮する。吸引で改善しない場合や、再発性の気胸の場合は、胸腔鏡によるブラの切除と胸膜擦過を行う。年齢や原疾患の影響など諸事情により外科手術が困難な場合には胸膜癒着術を行う場合がある。胸膜癒着術は自己血や50%ブドウ糖、ミノサイクリンなどをドレナージチューブより胸腔内へ注入し行う。気胸の治療や再発予防に有効であるが、外科手術の方が効果は高い。気胸発症時に先天性の異常血管を損傷し血気胸になる場合があり、出血性ショックを引き起こすこともあるので注意が必要である。少量の場合は、空気を除去するためのチューブを胸郭上部に、血液を除去するためのチューブを胸郭下部に挿入し対応するが、大量出血の場合には、外科手術が必要となる。
囊胞性肺疾患は,肺内に異常な含気性病変を認める疾患の総称であり続発性気胸の原因となり得る。代表的なものとして、ブラ、ブレブ、ニューマトセルがある。ブラは胸膜下の肺胞の破壊によって生じた肺内の異常含気腔のことであり、ブレブは胸膜内弾性板の破壊により臓側胸膜内に空気が流入して生じた異常気腔であり、ニューマトセルはチェックバルブによるエアートラッピングにより、肺胞が過膨張することで生じたものだが、肺胞壁の破壊がみられない点でブラ等と異なる。ブラが巨大化して片側の1/3以上を占めるものを巨大肺嚢胞症といい、労作時呼吸困難や胸痛、喀血が見られる。胸部X線やCT検査で診断することが可能であり、肺機能検査では閉塞性換気障害,拡散障害がみられる。治療は胸腔鏡下手術を行い、ブラを切除する。
1.Eur Respir J. 2017; 49: 1601296. PMID: 28404647.A
2.2018; 153: 946-953. PMDI: 29080710.