好酸球性肺炎

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好酸球性肺炎

概要

好酸球性肺炎は、末梢血好酸球の増多の有無を問わず、肺に好酸球が浸潤することにより肺野陰影を呈する疾患である。原因は不明であり、急性好酸球性肺炎(AEP)と慢性好酸球性肺炎(CEP)がよく知られている。

慢性好酸球性肺(Chronic Eosinophilic Pneumonia; CEP)

・疫学

Carringtonらが1969年に提唱した疾患概念であり、中年女性に多く、女性は男性の約2倍多く発症する。アレルギー疾患の既往があることが多く、特に気管支喘息患者が約半数の症例で併存する。1

・症状

喀痰、咳嗽、喘鳴、呼吸困難などの症状に加えて、発熱や全身倦怠感、体重減少なども認められる。

・検査・診断

血液検査で、末梢血中の好酸球やIgE値の増多を認めることが多い。末梢血好酸球の増多は初期には認めないこともあり、注意が必要であり、一方、IgE値は疾患活動性の指標になる。画像検査では、上肺野、末梢側優位に非区域性・移動性の浸潤影やすりガラス陰影を呈することが多い。診断は、外科的肺生検(VATS)や気管支内視鏡検査で経気管支肺生検(TBLB)で組織への好酸球の浸潤を証明することや、気管支肺胞洗浄(BAL)で好酸球比率(数)の上昇を証明することにより診断する。1

・治療・経過

無治療でも自然軽快することがある。再発難治例や呼吸不全を呈している症例において、治療の主体は副腎皮質ステロイドの全身投与である。多くの症例では、治療反応性が良好であるため臨床症状、検査所見(血液、画像)を見ながら徐々に漸減していく。しかし、ステロイドを減量していく経過で再燃することが多く、気管支喘息合併例では、気管支喘息治療の強化として抗体製剤(オマリズマブ、メポリズマブ、ベンラリズマブなど)を用いて病状を抑制することの有益性が報告されている。2

急性好酸球性肺炎(Acute Eosinophilic Pneumonia; AEP)

・疫学

Allenらが1989年に提唱した疾患概念であり、若い男性に多い。粉塵の暴露により発症することがあるが、喫煙との関与が指摘されており、特に喫煙開始を誘因とすることが多い。CEPと違い、過去にアレルギー性疾患を有さないことが多い。

・症状

発熱を伴う急性の呼吸困難、咳嗽などの呼吸器症状を呈する。低酸素血症(呼吸不全)が急速に進行し、人工呼吸器管理を必要とすることもある。

・検査・診断

血液検査では、炎症反応(白血球数やCRP値など)の上昇を認めるが、CEPとは異なり末梢血中好酸球の増多は軽度もしくは認められない。ときに遅れて回復期に増加することが観察される。また血中IgE値の増加も少ない。画像検査では両側肺野に非区域性・びまん性分布の浸潤影やすりガラス陰影を呈する。CEPとは異なり末梢側が優位な異常影の分布は示さない。また、胸水を伴うことが多い。CEPと同様に気管支内視鏡検査による経気管支肺生検(TBLB)で肺組織への好酸球の浸潤を証明することや、気管支肺胞洗浄(BAL)で好酸球比率(数)の増多を証明することにより診断する。3

・治療

喫煙、吸入物質(花火、スプレー、揮発性ガスなど)、薬剤など発症の原因が明らかな場合は、それらを中止また回避することで、治療薬を投与せずとも自然軽快することがある。しかし、現実的には、呼吸不全が進行しており副腎皮質ステロイドの全身投与を要する症例が多い。治療への反応性は良好であり、副腎皮質ステロイドの漸減中に再燃することはほとんど認められない。

近隣の医療機関の先生方へ

当科では気管支内視鏡検査が実施可能であり、緊急検査にも対応しています。また二次性の好酸球性肺炎、とくに薬剤やサプリメント、健康食品などによるもの、を疑った場合には特殊な検査で原因かどうか調べる診療も行っています。

 

1.Ther Clin Risk Manag 2019; 15: 397-403. PMID: 30936702.
2.Lung 2020; 198: 355-360. PMID: 32052155.
3.Am J Respir Crit Care Med 2018; 197: 728-736. PMID: 29206477.

著者

宇野 知輝鈴木 慎太郎