人工呼吸療法

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人工呼吸療法

人工呼吸療法は呼吸不全により酸素化が保たれない場合に行われる治療である。呼吸不全は主に換気不全、酸素化不全、両者の合併に分けられるが、いずれの状態であれ呼吸不全が進行する場合には人工呼吸療法が必要となる。鼻カニューレやマスクを用いて管理する非侵襲的人工呼吸療法と、気管チューブを挿入し管理する侵襲的人工呼吸療法がある。

非侵襲的人工呼吸療法には鼻カニューレやマスクにより酸素を投与し自発呼吸で吸入する方法と、口に密着したフェイスマスクにより非侵襲的陽圧換気(noninvasive positive pressure ventilation: NIPPV)を行う方法がある。主にCOPD急性増悪や心原性肺水腫をはじめとしたⅡ型呼吸不全にNPPVが推奨される一方で1、誤嚥のリスクがある患者、意思疎通が困難な患者、頭部外傷の患者には推奨されていない。また近年、高流量の酸素を投与する方法としてネーザルハイフロー(nasal high flow; NHF、high-flow nasal cannula; HFNC)が医療現場で急速に普及してきているが、こちらは高炭酸ガス血症を伴わないⅠ型呼吸不全が主に良い適応であり、侵襲的人工呼吸療法への移行率を下げることも報告されている2

侵襲的人工呼吸療法は経口あるいは経鼻的に気管チューブを挿入し機械換気を行う。低酸素血症に加え、高二酸化炭素血症、上気道閉塞なども適応となる。換気方法には主に従量式と従圧式があり、さらに細かく各種モードに分かれる。これらは呼吸不全の種類や原因疾患に応じて使い分ける必要がある。

前述の人工呼吸療法でも呼吸状態が保たれない場合に、体外循環と人工肺で呼吸循環を補助するExtra-Corporeal Membrane Oxygenation(ECMO、写真)を導入することがある。ECMOは原疾患そのものの治療ではなく、“肺を休める”意味合いが大きいが、昨今流行しているCOVID-19や致死的な呼吸器疾患の代表であるARDSに対する効果が報告されている3, 4 。ECMOは合併症などのリスクも高い治療法であり、熟練した医療スタッフによる厳重かつ高度な管理が必要である。

当院では呼吸器・アレルギー内科と集中治療科がタッグを組むことで、ECMOも含めて適切な人工呼吸療法を行う体制を整え、患者の治療に当たっている。

  1. Respir Care. 2004; 49: 810-829. PMID: 15222912.
  2. Respir Res. 2018; 19: 202. PMID: 30326893.
  3. N Engl J Med. 2018; 378: 2032-2034. PMID: 29791819.
  4. Lancet Respir Med. 2020; 8: 518-526.

著者

大田 進