アレルギー性気管支肺真菌症(ABPM)は喘息あるいは嚢胞性線維症を基礎疾患として有する患者で発症することが多く、これらの疾患に共通する気道病変あるいは免疫異常が発症に関与すると考えられている。生きている真菌(カビ)が胞子として吸入され、下気道で発芽して菌糸を出し、それが宿主の2型免疫応答を惹起することで病態が誘導される。
喘息患者でのABPMの有病率は0.7~3.5%とされるが温度・湿度や衛生状態などの環境要因でも変化する。日本では50歳以上での高齢発症が多くなっている。原因となる真菌はアスペルギルスを含む糸状菌が多いが、キノコなどが原因になる事がある。
基礎疾患として喘息の合併が多く、咳嗽、喀痰、喘鳴、発熱、胸痛、血痰、倦怠感などの症状を認める事が一般的である。
末梢血好酸球数増多、血清総IgE値の上昇を認め、血清総IgE値は疾患活動性を反映する。また血清でのアスペルギルス抗原特異的IgEや各種沈降抗体の測定が診断に有用なことがある。
ABPMに対する標準治療は経口の副腎皮質ステロイド薬投与である。難治例や再発例や併存症でステロイドの減量が困難な症例ではアゾール系抗真菌薬の併用を行う。これらの投薬でも治療困難な症例に関しては抗IgE抗体(オマリズマブ)の投与を検討する。
ABPMの中でアレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)は再燃例が多く、放置すれば広範囲の気管支拡張、肺の線維化・嚢胞形成、さらに呼吸不全に至る事がある。
当科では長年にわたり通院していただいている喘息患者さんや重症の喘息患者さんが多いことから、喘息に併発するABPMの診療の経験が豊富です。オマリズマブの投与が必要な難治例などの重症のABPM患者さんの経験も豊かですので、どうかご安心ください。他院の先生方におきまして、ABPMを疑う患者さんがいらっしゃった場合や治療に難渋する症例がいらっしゃいましたらぜひ当科にご紹介ください。