呼吸器疾患・アレルギー疾患の病態解明、新規治療法の開発につながるような研究活動を行っています。研究活動を通して、医学の発展に寄与することを目標としています。
昭和大学病院呼吸器アレルギー内科外来には、多くの喘息患者さんが通院されており、その中には難治性喘息、重症喘息の患者さんも多く含まれています。当教室では重症喘息の病態解明につながる臨床研究を行っています。当外来では重症喘息の患者さんに対する抗IgE抗体、抗IL-5抗体、抗IL-5受容体α抗体、抗IL-4/IL-13受容体抗体の生物学的製剤の処方件数も多く、重症喘息の治療における生物学的製剤に関連した臨床研究・治験を複数行っています。
COPDは今後世界の死亡原因第三位になるとされる疾患であり、人類が克服すべき重要な課題として国内外で非常に着目されています。当科には多くのCOPDの専門家がおり、臨床研究を主体に、COPD患者さん及びその家族の満足度や理解度調査・喘息を合併したAsthma COPD overlap・骨粗鬆症の合併についての検索・喫煙に関する詳細な調査・血液ガス分析や呼吸抵抗に基づいた検討など、多面的な評価を行っています。筋力・筋肉量が低下した状態であるいわゆる虚弱状態を指すフレイルをいかにして予防するかのCOPD患者における病態解明や、介入研究などを現在行なっています。また、多職種による患者教育の有用性についても検証を行なっています。COPDと言いますと、とかく肺や呼吸機能に目が奪われがちですが、我々はCOPD患者さんを包括的に診療することにより、その予後はもちろん、健康寿命の促進につながると考えています。
1.アニサキスアレルギーの患者さんを全国から広く受け入れ、診断、治療、経過観察、食事指導による長期管理まで一貫して行っており、累積目標症例数1,000例を集積しています。アニサキスアレルギー症例を長期管理した記録を有しているのは本学のみであり、本邦における同病態の特性・フェノタイピング、重症化因子、寛解に導くための食事指導を明らかにする目的で研究を行っています。また患者さん達自身が立ち上げた患者会(アニサキスアレルギー協会)と連携して研究推進事業を進め、行政や学術団体への働きかけを計画しています。
2.国のアレルギー疾患医療・研究の中心拠点病院である国立病院機構・相模原病院が主導で行っている食物アレルギー、アナフィラキシーに関する全国調査に分担研究機関として参加し、本邦の成人食物アレルギー診療の実態調査、エビデンス構築を目指しています。
3.本邦初の全国救急医療機関に受診・搬送されたアナフィラキシー症例を対象とした前向き調査であるANA-J (Analysis of Nation-wide emergency department transfer registration of Anaphylactic cases in Japan) の主研究機関としてデータの集積と解析を行います。成果は2021年後半より随時発表予定です。本学小児科学講座(今井孝成教授)と連携し、日本人のアナフィラキシーの重症化を規定する因子、ライフステージ別の臨床的特徴、アドレナリン自己注射液(エピペンⓇ)の使用状況、診療実態に関するエビデンスを構築していきます。
4.アドレナリン自己注射液(エピペンⓇ)の使用はアナフィラキシー発症後に患者の予後を改善できる重要なプレホスピタルケアです。しかしながら、恐怖心や注射手技の忘却から緊急時に実際に使用できない事例が多い薬剤であることも事実であり、同薬の使用手技の技能低下に関与する因子が何か特定し、より効果的な注射手技の教育・指導が可能になることを目指します。
上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)は高い抗腫瘍効果を有する
肺癌の治療薬として広く使用されています。しかし、その効果は限定的であり、より詳細な病態解明が求められています。EGFR-TKI治療を受ける肺癌患者さんを対象に、血液中のcell-free DNA を解析することでEGFR-TKI治療の耐性機序解明と新規治療効果予測因子の探索を行っています。
人口の高齢化が進む我が国では、多くの併存症を有する患者さんも増えております。大学病院には多数の専門家がおり、様々な併存症を有する患者さんの治療が求められます。したがって、大学病院でのがん診療は特殊な面もありますが、実臨床をよりよく反映した医療が求められ、展開されているといっても過言ではありません。このような患者層に対し、治療効果のみならず、合併症も含めた検討を行っています。
当院は大学病院の中では市中肺炎・医療関連肺炎に対する門戸が広く開かれていると自負しております。実際に重症患者さんに関しては集中治療科と連携し、嚥下機能の低下している患者さんにつきましてはリハビリテーション科と連携して嚥下機能の評価まで行うなど多面的な患者の診療を行なっています。大学病院としての役目として、現在複数の臨床研究を行なっており、バイオマーカーを用いた研究・画像解析を用いた研究・患者家族と担当医師の肺炎に対する見解の差などを行なっています。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、2021年6月現在、世界で1億7千万人以上の感染者、380万人以上の死者を出している新興感染症です。当教室では他施設と合同でCOVID-19に対する臨床試験や新規治験、後遺症の調査を実施しているほか、患者さんの血液検体等を用いて、独自にCOVID-19の重症化因子等の解析を行っています。ワクチンが開発された今なお、新規の感染あるいは後遺症に苦しんでいる患者さんが多くおり、研究結果を患者さんに還元できるよう、日々研究を重ねています。
気道上皮細胞を用いた気道疾患の病態解明に取り組んでいます。気道上皮細胞株として、BEAS-2B、Calu-3、16HBE14o-などを所有・保管しています。またヒト気道上皮細胞培養も行うことができる環境を有しています。気相液相培養(air-liquid interface: ALI)を行うことでより生体に近い環境で培養を行い、細菌やウイルス、タバコ煙などによる気道上皮細胞への影響を検討し、各種治療薬の反応性を検討する実験を行っています。喘息やCOPDの病態解明につながる研究を継続して行っています。
昭和大学呼吸器・アレルギー内科では、他大学・研究機関とともに積極的な共同研究を行っています。当教室では以下の研究資材や臨床関連検体を利用できる環境にあります。
共同研究のご提案がありましたらお気軽にご連絡ください。