胸膜中皮腫

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胸膜中皮腫

悪性胸膜中皮腫は早期(Ⅰ期)の5年生存率が15%未満、Ⅳ期に至っては5年生存率0.0%と予後が不良である。
1960年に胸膜中皮腫が初めて報告されてから約60年が経過している。アスベスト曝露が原因であることは、疫学研究や動物実験にされているが、発生機序に関しては不明な点が多い。
アスベストは、耐熱性、耐摩擦性、耐薬品性などの工業的に優れた性質を持っているため、幅広く建材、摩擦材、シール材など多くの工業製品に使用されていた。
2006年にアスベストの使用が国内で全面禁止になった。しかし、曝露から発病までの期間が25〜50年と長期であることから、罹患者数のピークは2030年頃で年間3000人に及ぶとされている。

罹患者数は少ないものの、死亡者も年々増加しており、肺癌と並んで重要な疾患である。

診断方法として胸腔鏡下胸膜生検、CTガイド下針生検を行う。
悪性胸膜中皮腫に比較的特異性の高い胸水中メソテリンを近年では測定している。

治療に関しても手術、化学療法、放射線照射があるが、いずれも予後は芳しくない。2018年にノーベル医学生理学賞を受賞した本庶佑氏が開発したニボルマブが同疾患に適応が拡大された。

ニボルマブは約3割に症例に効果があったとの報告もあり、今後とも更なる研究が望まれる。

著者

佐藤 裕基