過敏性肺炎は、過敏反応の原因となるアレルゲンの反復吸入により引き起こされるⅢ・Ⅳ型アレルギーによる肺炎である。原因は多岐にわたり、自宅環境中の抗原、鳥関連の抗原、職業環境中の抗原による肺炎が代表的である。日常診療で多く経験するものとしては、自宅家屋内の環境中物質、エアコン・加湿器中の真菌(カビ)、鳥糞や羽毛、農家の堆肥中の真菌類、きのこ栽培農家における胞子、化学物質などが挙げられる。近年では、ダウンジャケットの中の羽毛などで発症した事例も報告されている。アレルギーは何が原因でも生じうるため、患者の生活環境、ライフスタイル、季節などにより原因は様々である。
症状は、発熱や咳嗽、息切れ、呼吸困難などが主である。胸部レントゲンや胸部CT検査で両側に陰影(すりガラス影のことが多い)の増強を認める。過敏性肺炎を診断するには、血液検査で環境中の抗原に対する抗体反応の確認が必要である。ほかに、気管支鏡検査にて肺の洗浄・組織採取を行い、特徴的な細胞分画や病理組織所見を検出することが診断に結びつく。最も信頼性が高いのは環境への再暴露による症状の再燃の確認であるが、帰宅中に呼吸不全や気分不快で倒れる症例もあり、実施には安全確保が必須である。また、家屋や住宅などの住環境中の抗原が原因として疑わしい場合には、調査対象の環境からサンプルを採取し、検体内に原因と目する真菌や無機物がないか調査する。当院では、積極的に患者の住環境の調査を行い、有益だった症例を報告している。
当院呼吸器・アレルギー内科では、血液検査での精査(沈降抗体の提出、国立病院機構相模原病院への検査依頼)、気管支鏡検査を行っている。自宅環境調査※、吸入誘発試験※等の検査も必要に応じて施行している。 ※(要相談)
治療の基本は、原因抗原の回避である。多くの症例は改善を認めるが、重症例ではステロイド薬の投与を行う。退院したのち、帰宅後に再発を繰り返す経過を辿る症例も中にはあり、転居や住居の建て替えを余儀なくされる症例も存在する。本稿とは別に、慢性の経過を辿る過敏性肺炎(慢性過敏性肺炎)も存在する。急性過敏性肺炎とは名称が類似しているが、基本病態が異なっている可能性も指摘されている。慢性過敏性肺炎には、特発性肺線維症(通常型間質性肺炎)との鑑別が容易でない症例も存在し、治療への反応性が不良な症例も少なからず存在する。
リンク:日本呼吸器学会 呼吸器の病気 C-02 過敏性肺炎
https://www.jrs.or.jp/modules/citizen/index.php?content_id=16
研究業績
眞鍋 亮ほか. 吸入誘発試験により診断しえた加湿器肺の一例(原著論文).
日本職業・環境アレルギー学会雑誌. 2019; 2: 81-88.
鈴木 慎太郎ほか. 抗原回避に苦慮した住居関連過敏性肺炎の二例 診断、治療、管理における環境調査の有用性(原著論文/症例報告). 日本職業・環境アレルギー学会雑誌. 2016; 23: 41-50.